研究概要 |
花粉症発症の地域差の背景をなす環境要因を明確にするために,大気汚染および空中花粉飛散状況の調査を行った。その結果,富山県という限られた地域においても果樹園など農業と関連して特徴的な空中花粉飛散パターンを示す地域の存在することが明らかになった。また,空中スギ花粉の飛散パターンに注目すると,標高別あるいはスギ林の分布と関連し複雑な地域差が示されたが,そうした情報をマップとして地図状に視覚化しうることが示された。 また,医療機関の協力を得てスギ花粉症患者に対する調査を実施した。集められたスギ花粉症患者3,382症例の臨床データについて検討を加えたところ,花粉症全体としては男女比ではやや女性優位で、30〜39才の年令群に高い比率で認められた。また,スギ花粉飛散数とほぼ平行した症状の発症が認められ,従来の報告を裏付ける内容が得られた。更に地域別に花粉症例を分析すると,興味深いことには,都市部と山間部の一部地域に,花粉症患者の年令分布のかたより,若年化傾向を示す地域の存在することが明らかになった。そうした花粉症患者の若年化傾向の原因については現在不明であるが,何らかの花粉症発症を促進する環境要因の存在が示唆されている。平成9年度には,小地域についても詳細な検討を加え花粉症発症に影響を与える環境要因について検討した。その結果,若年者に多く認められるストレス,食事のかたより,多種類の抗原物質への暴露などが,花粉症発症促進因子として示唆された。
|