研究概要 |
運動不足病(hipokinetic disease)は,生活習慣病(lifestyle related disease)としてまとめられている多くの疾患に関連する慢性的運動不足状態が引き起こす退行性疾患を意味している.ところが,これらの実際的な因果関係については,明確な検証が乏しいのが現状である. そこで,本研究では,50歳〜91歳のおよそ778名の中高齢者を対象にして,日常生活の活動状況と,生活習慣病の発症に関係する危険因子(高脂血,高血糖,動脈硬化,高血圧,肥満,喫煙,運動不足,ストレス過度)との関連について調査し,その因果関係について客観的な関係式を見いだすことを目的とした. 調査項目は以下の8カテゴリーのおよそ40項目であり,資料は1997年〜1998年に収集したものを採用した. 1.身体活動状況調査(スポーツ歴,運動実践状況,日常活動歩数) 2.身体組成(BMl,体脂肪率,骨伝導音式骨強度) 3.血液生化学検査(T-cho,HDL,LDL,TG,Glucoce,GOT,GPT,γ-GTP,Hb,Hct) 4.基本的生活動作能力(起居,歩行,手腕.身辺) 5.行動体力(握力,脚伸展力,長座体前屈,反復横跳,閉眼両足立重心動揺面積,リズムステップテスト) 6.問診調査(既往症,現疾患,家族歴,不定愁訴,食生活内容,休養とストレス状態) 7.心と社会性テスト 8.簡易痴呆テスト 以上の調査結果について,各々の相関行列を求め,これに因子分析法を適応し,多重共線性を排除したのち,各個人の危険因子保有数との重回帰分析を行い,以下のような重回帰式を算出することができた。すなわち,男性では,Y=-.770-.000222X1-.063X2+.0108X3+.0106X4+.00486X5-.0522X6(x1:一日総歩数,X2:体力合計,X3:肝機能合計,X4:T-cho,X5:TG,X6:VO2max)女性では,Y=-.978+.0221X1+.00735X2-.0889X3+.294X4-.000071X5+.0324X6-.0274X7+.0182X8(X1:T-cho,X2:TG,X3:生活習慣,X4:現疾患,X5:一日総歩数,X6:痴呆テスト,X7:体力合計,X8:%Fat)となった。これらの重回帰式の有効度は決定係数R^2において、男性.615,女性.741と高い値を示した。 以上のことから,本研究で作成されたこれらの重回帰式は,中高齢者の運動不足状態と健康度の関連性を判断し,現在及び将来の健康状態を推定する上で意義ある情報源となると思われる.
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