研究概要 |
本研究は、睡眠・覚醒リズムの年齢影響を検討することを目的とし、以下の三つの研究を行った。一つは、日本の生徒518名(6〜18才)、日本の勤務者集団1,143名(18〜65才)および韓国の勤務者集団1,098名(19〜58歳)を対象に、睡眠習慣調査とHoreとOstbergによる朝型-夜型(ME)質問紙調査を実施した。習慣的な就寝時刻は学年とともに遅延したために、平日睡眠時間の長さも暫時短縮していた。授業中居眠りする者の比率は、中学2年生から高校3年生にかけて急に増大していた。平均M-E得点は学年進行と共に減少したが(夜型傾向)、とくに中学1年生でその変化が顕著であった。こうした睡眠位相の後退や睡眠時間の短縮、夜型化および日中の居眠りの増加は、主として中学初期における性的発達が関連していることを考察した。勤務者を対象とした研究では、日本・韓国とも加齢にともない就寝時刻が早く,ME得点も朝型方向に変化していた。こうした成績から、年齢とともに睡眠・覚醒リズムの位相は前進することを考察した。 2つ目の研究では、計78夜の標準的なpolysomnographと手首に装着したアクチグラフの活動数から、睡眠・覚醒判別の最も高い2次判別方程式を求めた。その睡眠覚醒一致率は96.68%で、Coleらの先行研究より高かった。 3つ目の研究は、4名の女性を対象に、妊娠34週目から分娩後3ケ月間にわたり手首アクチグラフを連続測定し、この間の睡眠・覚醒パターンの特徴を検討した。分娩後約1ケ月間では、夜間の中途覚醒の増加をともなった睡眠・覚醒リズムの乱れが顕著であったが、その後の乱れは少なくなる傾向を示した。こうした成績は、新生児の授乳リズムないしは睡眠・覚醒リズムの発達過程と同期していることを推測した。
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