研究概要 |
騒音の個人曝露評価のツールとして,騒音曝露による聴力の一過性閾値移動(TTS)を迅速にシミュレートするための聴力リスク計の演算ユニットを開発した。当初は,ユニット内に曝露騒音レベルの測定,記録,TTS演算,表示の機能を持たせる予定であったが,経費的に難があった。一方で,サブノートタイプのパソコンのCPUの高速化が進み,従来の数十分の一の早さで演算可能であることが判明し,ユニット内には曝露レベルを記録しておき,一旦携帯用パソコンにデータを転送して,演算・表示するシステムとして開発することに変更した。 現在完成したユニットは,TTSの5つのテスト周波数2,3,4,6,8kHzの臨界帯域のバンドパスフィルタとA特性フィルタを内蔵し,各フィルタの音圧レベルに比例した0〜1Vの直流電圧出力(6チャンネル)を取り出すことができる。ダイナミックレンジは50dBで,50-100,60-110,70-120dBの3段階の範囲に切り換えることが可能である。寸法は60mm×100mm×25mmの小型で約200gの重量となった。 このユニットと既に開発して使用している携帯型のデジタルテープレコーダを用いた個人騒音曝露計を同一の作業者に着用してもらい,高速輪転機による印刷作業現場において曝露騒音の比較を行った。その結果,騒音レベルについては,2〜3dBAの乖離が認められたものの,TTSの臨界帯域レベルの測定値,さらにはTTSのシミュレーション結果においては良い一致をみた。したがって現場の個人騒音曝露計として十分活用可能であることが明らかとなった。従来,記録時間と同じだけの分析時間を要していたものが,数十分の一以下の所要時間ですむようになったことになる。
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