研究概要 |
ラットにX線を照射した際に生ずるアポトーシス像をH-E染色とTUNEL法によって観察し,死後変化の影響を検討した。X線照射6時間後に屠殺し,脾,胸腺,副腎,精巣を摘出した。摘出後0,6,12,24時間室温にて保持した後固定し,パラフィン包埋標本をを作成した。非照射群では,脾,胸腺,精巣での少数のTUNEL陽性細胞が確認されたが,副腎では確認されなかった。H-E染色でアポトーシスを示す所見は得られなかった。照射群では胸腺皮質,脾リンパ瀘胞リンパ球に輪郭明瞭なアポトーシス陽性細胞の著明な増加を認めた。精巣原精細胞ではわずかな増加にとどまり,副腎では陽性細胞を確認できなかった。H-E染色で,胸腺皮質,脾リンパ瀘胞のTUNEL陽性細胞出現領域にほぼ一致して核縮小像を認めた。死後変化の検討では,H-E染色による核縮小像の増加は認められない。TUNEL法では,新鮮臓器に認められた核内のアポトーシス陽性像は死後経過にしたがって核外に拡散し,染色性は低下して輪郭不明瞭の像となった。また死後変化のみによるTUNEL陽性細胞の出現は各臓器とも認められなかった。個々のTUNEL陽性細胞が照射によるアポトーシスによるのか,それとも死後変化によるものかの判断は困難であるが,TUNEL陽性拡散像をともなうものがあれば死後変化の影響を受けた陽性であるとの判断は可能であろう。
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