研究概要 |
1)精漿(約600ml)について,まずBlue-Sepharoseクロマトグラフィーで0.1MKCI溶出分画(2.55g)を得た.ついでSephadex G-100及び,G-75を用いたクロマトグラフィーにて得られた分画(約96.2mg)について,更にFPLC装置(ファルマシア社製)を用いて陰イオン交換及びゲル濾過を行い精漿蛋白質を精製した. 2)精製蛋白質はSDS-PAG(12%)電気泳動法で,1本のバンドのみが認められ,分子量は約36kDaと算出された(以下Seminal protein 36kDaと仮称,略してSP36kとする). 3)SP36kのN末端領域のアミノ酸配列を決定した結果,N末端アミノ酸はAspのみが検出され,以下Thr,lle,lle ,Pro,Ala,Val,Proという配列であった.次にアミノ酸配列既知物質とのホモロジー検索を試みたところ,ヒトフィブロネクチン(以下,FNと略す)のN末端から1230番目のAspから始まる8残基と完全に一致した. 4)自家製抗SP36kウサギ血清はFNと,市販抗FN抗体は精製SP36kと,それぞれ反応し,SP36kはFNのフラグメントであると考えられた.また,β-Smとの異同をβ-Sm標品と抗β-Sm血清で検討した結果,SP36kと共通抗原性が認められた. 以上の成績より,SP36kはFNと共通の抗原性を有し,N末端領域のアミノ酸配列と分子量から推定して,FNの細胞接着活性に不可欠なアミノ酸配列,Arg,Gly,Asp,すなわちRGDモチーフといわれる部位をも含めた1238番目から1509番目までの細胞接着ドメインのほぼ全域と一致すると考えられた. 5)SP36kの男性生殖器における局在は,免疫組織化学染色法で精嚢に局在すると考えられ,また精漿中の含有量はELISA法で測定した結果,精漿中の平均含有量は996μg/mlであった.
|