研究概要 |
自己免疫疾患における可溶性Fasの意義と発現制御機構を解析した. 1. RT-PCR法により,全身性エリテマトーデス(SLE)と健常人の末梢血単核細胞における全長Fas遺伝子発現を解析した結果,健常人では模型Fasと膜欠損型Fas遺伝子の2種類のPCR産物のみが認められたのに対して,SLEではこれら2つ以外に,サイズの異なる複数の副バンドを認める症例多かった.そこで,これら副バンドのPCR産物をTAベクターにクローニングして塩基配列を決定した.膜貫通領域のエクソン6欠損と共にエクソン3, 4, 6の欠損型も認められた.エクソン3, 4, 6欠損型Fas遺伝子はN端側49アミノ酸はFasであるが,フレームシフトにより21アミノ酸からなる非Fasペプチドが付加された可溶性蛋白分子をコードすると考えられた.この分子がSSLE血清中に存在するのかどうか,また機能的および病的意義などは継続して解析中である. 2.可溶性Fas遺伝子はエクソンスキッピングという選択的スプライシング機構により生成される.上記のデータよりエクソン6の欠損が最も高頻度であり,次にエクソン3および4の欠損が多い.そこで,各イントロン3′スプライス配列を比較・検討した.イントロン3′末端のagを除く20塩基中のピリミジン(T, C)の割合は第5イントロンが60%と最も少なく,次いで第3イントロンの65%であった.更に,3′末端agとピリミジン連続配列との間にアデニン塩基の介在が最も多いのが第2イントロンであった.逆に,第4イントロンではピリミジンの割合が90%と最も多かった.以上の結果は,3′スプライス部位の選択がピリミジンの割合や連続配列の長さ,agとピリミジン連続配列との距離などにより決定されることを示している.恐らくSLEではリンパ球の活性化に伴い,Fas遺伝子の発現が亢進するため,3′スプライス部位のヒエラルキーが強く反映され,種々のエクソンスキッピングが起こると考えられた.
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