研究概要 |
樹状細胞は不均一な細胞集団である。我々は末梢血より一次免疫応答誘導能をもつ樹状細胞の分離法を確立してきた。しかし、その由来となる前駆細胞の性状については全く不明であった。それを明らかにすることで現在癌の免疫治療に応用されるようになった樹状細胞の分離法を改善しさらに担癌患者への臨床応用をおこなった。末梢血単核球をフィコール比重遠心法で分離後、パニング法によりT、B、N、K細胞及び単球を除いた残りの細胞を抗HLA-DR抗体FITCと抗CD2抗体PEで二重染色しフローサイトメトリーで解析した。HLA-DR brightの細胞分画はCD2(-)とCD2(+)の2つに分画された。HLA-DR dullの細胞分画はCD34(+)CD2(-)で幹細胞と推定された。抗原提示分子をもつHLA-DRbright、CD2(-)とCD2(+)分画をセルソーターにより精製した。両前駆細胞とも光学顕微鏡、電子顕微鏡下ではリンパ球より若干大型の円形の形態を示し、細胞質内に顆粒を有していた。両前駆細胞には蛋白抗原に対する抗原提示能はないが、分化して樹状様の形態に変化するとCD2(-)細胞由来の樹状細胞は二次免疫応答のみを誘導し、CD2(+)細胞由来の樹状細胞は一次、二次両方の免疫応答を誘導した。一次免疫応答誘導能をもつ前駆細胞はCD2(+)分画にありそのフェノタイプはCDla+,CDlc+,CD4+,CD33+,CD40+,CD54+,CD86+,HLA-A,B,C,DR,DQ,DP bright,lineage negativeで分化に伴いCD2,CD4,CD33の発現が低下し、CD40,CD54,CD80,CD86などの接着分子の発現が増強した。これら前駆細胞は末梢血単核球の0.5%以下であった。単核球からone layer Percollで樹状細胞を分離する方法を確立した。腫瘍lysateを抗原として肝癌、肺癌、大腸癌患者に樹状細胞ワクチン療法を開始した。
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