研究概要 |
平成8年度はtRNAおよびtRNA関連蛋白に対する抗体の検出とその臨床的意義を検討した。 1.患者血清1472例を免疫沈降法でスクリーニングし,tRNAを沈降する血清を40例見出した。 2.抗原蛋白成分を分析した結果,14例は抗アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)抗体であった。 3.40例の血清について,脱蛋白RNAを用いた免疫沈降法を行ない、tRNA自身を認識する15血清を認めた。 4.抗tRNA抗体陽性患者15例のうち、抗PLー12抗体陽性の2例はいずれも筋炎を伴わない間質性肺炎例であった。この2例を除く13例では全身性エリテマトーデスおよびシェ-グレン症候群が、臨床症状では発熱、レイノ-現象、関節炎、白血球減少、環状紅斑が高頻度に認められたが、筋症状の頻度は少なかった。 平成9年度はかかる抗体が認識する自己抗原dエピトープの解析を行った。 1.患者WSの抗tRNA抗体はTψCーとDーloopにより成る特異的3次構造(L字構造)を認識していた。 2.RNAフットプリンティング法でこの抗体はRNAの3'末端より10-40塩基に結合していた。 3.3例(KuK、KoK、WS)が大腸菌より抽出したtRNAを認識した。 4.かかる3例の抗tRNA抗体が認識するtRNAの構造は互いに異なっていた。抗tRNA抗体の一部は大腸菌からヒトtRNAまで種を超えて反応した。かかる抗体が認識するtRNAの構造は単一ではなかったが、これまで報告のない膠原病の特定の病型、病像と関連することが示された。
|