研究概要 |
1.抗RNAポリメラーゼII(RNAPII)抗体の分子免疫学的性状の分析 : (1)抗RNAPII抗体陽性15例は,免疫沈降法により全例220kDa脱リン酸化型,240kDaリン酸化型の両subunitを認識した。合成ペプチドによる免疫沈降反応抑制試験では,11例中8例(5例で完全,3例で部分的)に抑制が認められた。かかる例では,両subunitに対する反応が抑制された。RNAPII抗体陽性15例中14例血清は,in vitro transcription/translationにより得られたRNAPII23kDa蛋白を免疫沈降したが,一例も33kDa subunit蛋白を認識しなかった。(2)pulse chase analysisにより,抗RNAPIImAbである8WG16および抗RNAPII抗体陽性血清は先ず220kDa脱リン酸化型subunitのみを認識,経時的に240kDaリン酸化型subunitを認識するようになった。これは220kDa subunitのpost translational modification過程に一致するものと考えられた。 2.抗RNAPII抗体の転写活性抑制反応の分析 : 抗Sm抗体陽性血清IgGおよび健常人血清IgGでは,CMV immediate early promoterの転写活性を抑制せず,抗RNAPII抗体陽性血清IgGは転写活性を抑制した。adenovirus major late promoterでも同様に,抗RNAPII抗体陽性血清IgGはRNAPII転写活性を抑制した。 3.抗RNAP抗体陽性例のHLA ClassIIの検討 : 抗RNAP 抗体陽性例はDRβ1アミノ酸配列^<67>FLEDR^<71>を共通して持っていた。 【結語】RNAPII-220kDa subunitのリン酸化型,脱リン酸化型の両subunit C末端領域(CTD)が抗RNAPII抗体の主要エピトープと考えられた。抗RNAPII抗体はその転写活性も抑制し,強皮症の発症に転写異常が関与する可能性が示唆された。
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