I型(自己免疫)糖尿病は、主に自己免疫機序を介して生じた膵島炎により膵β細胞が破壊され、インスリンの絶対的な不足をきたして発症すると考えられている。しかし膵β細胞の破壊がアポトーシスによるものか、ネクローシスによるものかは未だ明らかではない。私たちは、断片化したDNAの3'末端を標識することにより組織内のアポトーシス細胞を特異的に検出する方法であるTerminal deoxynucleotidyl transferase mediated dUTP biotin nick end labelling(TUNEL)法を用いて、I型糖尿病のモデル動物であるnon obese diabetic(NOD)マウスにおける膵β細胞破壊とアポトーシスの関連を検討してた。その結果、特に糖尿病発症前の15週齢前後の膵β細胞にアポトーシスを認め、10週齢以前および糖尿病発症後にはアポトーシスを認めないことより、アポトーシスによる膵島細胞障害が糖尿病発症に深く関与している可能性が示唆された。さらにアポトーシスを誘導する機序として、膵β細胞にFas抗原の表出が観察されることより、Fas-FasL系の関与が考えられた。またin vitroでは膵β細胞株はサイトカインによりiNOSを発現し、NOを介してアポトーシスを生じるとされているが、私たちはin vivoで膵β細胞にiNOS抗原の表出は認めなかった。今後アポトーシスとサイトカインの関連も検討していく必要があると考える。
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