研究概要 |
本研究では意識下犬を用い,空旗期および食後期の消化管機能の調節においてNitric Oxide(NO)がいかなる役割を果たしているかを検討した. 1.空腹期運動およびモチリン放出 空旗期には運動のみられない休止期を挟み約100分間隔で強収縮運動が観察されるが,NOの合成阻害剤によりその運動様式がどう変化し,強収縮運動を調節するモチリンの放出がいかなる影響を受けるかについて検討した.イヌの消化管にフォーストランスデューサーを縫着し,休止期に経静脈的にN^G-nitro-L-arginine(L-NNA)を投与した.その結果,L-NNAは空腹期強収縮様運動を惹起し,これがモチリンの放出を介したものであることが判明した. 2.食後期の消化管運動と胃排出 液体の胃排出の指標として非吸収性マーカー,固形物はそれ自体の乾燥重量を利用し,L-NNA投与により胃運動ならびに液体と固形物の胃排出がどのような影響を受けるかを検討した.その結果,L-NNAにより食後の胃前庭部運動は亢進するものの,液体,固形物の胃排出は著明に抑制されることが分かった. 3.食後の胆汁排出と膵外分泌 上記と同じモデルを用い,経静脈的にL-NNAを投与し,食事摂取後の胆汁酸の排出ならびに膵外分泌が如何なる影響を受けるかを検討した.採取した腸液内の胆汁酸濃度ならびにアミラーゼ濃度を吸光度計で測定した.その結果,L-NNAは膵外分泌の有意な抑制を示し,一方,胆汁酸の排出も抑制傾向が観察された. 以上の結果から,内因性のNOは生理的な空腹期運動の調節ならびに食後の胃運動や胃排出,膵外分泌や胆汁酸の排出の調節に深く関与していることが示唆された.
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