研究概要 |
カテプシンEの膵癌における特異的発現を免疫組織化学において検討したところ、カテプシンEはmucinous hyperplasia,intraductal papillary hyperplasiaにおいても発現がみられさらにpancreatic ductal adenocarcinomaにおいて強い発現が認められた。我々はヒトカテプシンEに対するモノクローナル抗体とポリクローナル抗体を用い、ELISAを確立し、カテプシンEを血液、尿、膵液で測定したところ、カテプシンEは血液や尿中には認められなかったが膵癌症例の膵液中に認められた。そこで膵液を内視鏡的逆行性膵管造影時に採取しカテプシンEを測定した。対象はpancreatic ductal adenocarcinoma 11例,mucin producing adenoma 10例,chronic pancreatitis 43例。膵液中のカテプシンEはpancreatic ductal adenocarcinoma 8/11(72.7%),mucin producing adenoma 5/10(50.0%),chronic pancreatitis 4/43(9.3%)で陽性を示した。膵癌で有意に高率に膵液中カテプシンEが認められ、カテプシンEは良い膵癌マーカーと考えられた。また腺腫でも認められており、膵におけるカテプシンEの発現は膵癌発生の比較的初期の段階で認められた。また、膵液中の蛋白量あたりのカテプシンEの量をみると、膵癌と膵腺腫とでは定量的に差が認められた。すなわち、膵癌における膵液中カテプシンEの量は腺腫における量と比べ有意に高値を示した。さらに、膵液中のカテプシンEとCA19-9を比較してところ、CA19-9では慢性膵炎における陽性率が高く(43.5%)膵癌との鑑別が困難であったのに対し、カテプシンEでは膵癌の正診率は75%と良かった。
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