研究概要 |
原発性胆汁性肝硬変(PBC)におけるサイトカインネットワークの異常と病態の関係を明らかにする目的で、PBC9例、CHC10例および正常肝の生検肝組織を用いて、各種サイトカインの発現をRT-PCR法により検討した。各種サイトカインの発現頻度については、PBCにおいてIL-5,-6,-10,IFN-γ,IL-12,-15の発現はほぼ全例に認められ、特にIL-5,IL-6,IL-12の発現頻度が正常肝およびCHCに比較して有意に高率であった。一方、IL-2およびIL-4の発現はPBC,正常,CHCにおいて低率であった。各種のサイトカインの発現強度について、PBCにおいてIL-5,IL-6,IL15の発現強度が正常肝およびCHCに比較して強かった。また、IFN-γはPBCにおいて有意に発現強度が強く、一方IL-10はCHCにおいて有意に発現強度が強かった。肝組織において代表的なTh1およびTh2サイトカインである、IL-2およびIL-4がほとんど検出されないことから、Th1サイトカインとしてIFN-γを、Th2サイトカインとしてIL-10を選択し、両者の関係をプロットすると、両者の発現のパターンはPBC群、CHC群で明らかに異なっていた。すなわちPBC群では高IFN-γ・低IL-10、一方CHC群では低IFN-γ・高IL-10であった。正常例では両者とも低値であった。このことからPBC群では少なくともTh1細胞の活性化が生じていることが明らかになった。さらにIFN-γの発現強度と血清γ-GTPには有意な正の相関を認めた。今後Th1サイトカインの発現を抑制することによる治療応用の可能性が示唆された。
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