研究概要 |
大腸癌の組織発生,発育・進展に関する検討:ポリ-プ型及び表面型早期癌及び進行癌症例におけるKi-67からみた細胞増殖態度,apoptosis,MUC-1ムチン,pS2蛋白の発現を検討したところ,1. Ki-67標識率はポリ-プ型早期癌に比べ表面型早期癌で有意に高値であった。逆にapoptosisはポリ-プ型早期癌が表面型早期癌に比べ有意に高値であり,各々の増殖態度が異なる事が明らかになった。2. MUC-1ムチンは癌で高率に発現し,腺腫ではほとんど発現しなかった。このことからMUC-1ムチンは腺腫の癌化に関与していると考えられ,また大腸癌と腺腫の鑑別指標の1つになりうる可能性が示唆された。さらに,sm癌・進行癌ではMUC-1ムチン発現が転移能・予後に密接な関連を示し,内視鏡治療の適応決定や予後推定に有用な因子である事が明らかになった。 3. pS2蛋白は,癌及び過形成病変が腺腫に比して有意に高頻度であった。また,ポリ-プ型,腫瘍径が大きいもの,右側結腸病変,腺腫併存病変で有意に発現率が高く,癌の組織発生との関連が示唆され,今後他の因子との関係を検索する事が必要である。 内視鏡切除遺残大腸癌の悪性度変化に関する検討:ヌードマウス移植大腸癌における高周波電流刺激の影響を検討したところ,1. Ki-67標識率の検討から,高周波電流刺激大腸腫瘍はより高い増殖能を獲得する事が明らかになった。2. 腫瘍によっては,刺激前と比べEGF-receptor, TGF-aの発現増強が見られた。しかし,VEGF, bFGF, Type VI collagenaseの発現増強は見られなかった。以上,内視鏡切除遺残大腸癌の一部のものは,治療の影響により高い増殖能を獲得する事が明かになった。
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