我々は、HTLV-I endemic areaにおけるC型慢性肝障害からの原発性肝癌の発症に、HTLV-Iの重感染が促進的な因子として働く可能性を考え、HCV陽性の慢性肝炎とHCC患者の末梢血液単核球における増殖型(マイナス鎖)HCV-RNAを測定し、その検出率とHTLV-I感染の有無との関係を検討した。 C型慢性肝炎患者(HTLV-I陽性5例をふくむ)17名およびHCV陽性原発性肝癌患者(HTLV-I陽性10例をふくむ)20名の末梢血液より単核細胞を分離後、total RNAを抽出しRT-PCR法を用いてHCV RNAの検出を行った。慢性肝炎患者のHTLV-I抗体陽性者では、プラス鎖HCV RNA陽性率5/5(100%)、マイナス鎖HCV RNA陽性率4/5(80%)でHTLV-I抗体陰性患者の9/12(75%)、3/12(25%)に対して高頻度であり、特にマイナス鎖HCV RNA陽性率については有意差を認めた(p=0.036、カイ2乗検定)。原発性肝癌患者のHTLV-I抗体陽性者では、プラス鎖HCV RNA陽性率9/10(90%)、マイナス鎖HCV RNA陽性率4/10(40%)でHTLV-I抗体陰性患者の6/10(60%)、2/10(20%)に対してやはり高頻度であり、慢性肝炎と同様の傾向を示した。この結果より、HTLV-Iが重複感染しているC型肝炎、肝癌患者においては末梢血液単核細胞においてHCVの増殖が亢進していることが示された。また単核細胞を免疫学的方法により分画し、同様にRT-PCRを行なってどの分画にマイナス鎖HCVが検出されるか検討した結果、主にT-cell、B-cellに検出された。平成8年度の研究では、HCV陽性慢性肝疾患患者におけるHCVに対する抗原特異的キラーT細胞活性の測定に至らなかった。
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