(1)染色遺伝子の解析を行いウイルスの組み込みを検討する本研究の目的と将来期待される疾患への還元について、患者または遺族に説明し遺伝子解析を遂行することそのものに対する承諾を得た。(2)染色体遺伝子の単離:凍結保存された肝組織からProteinase Kとdetergentにより染色体遺伝子を分離し、RNaseで消化した後、PhenolとChloroformで精製しエタノール沈殿により回収し、OD260を測定し遺伝子濃度を概算し以下の実験に用いた。パラフィン包埋された肝組織では、これを薄切し小チューブ内で脱パラフィンと脱水を行なった後に染色体遺伝子を抽出、精製した。(3)肝炎ウイルスの存在を調べるPCR:染色体遺伝子50ngをtemplateにし、5'NCRを標的としたprimerでPCRを行いアガロースゲルで泳動しぎ、標的核酸配列の増幅を確認した。(4)核酸遺伝子の染色体遺伝子への組み込みの検討:染色体遺伝子10μgをHCV遺伝子配列内で切断しない制限酵素EcoRV、またはHCV遺伝子のcoreとE1領域の一部で切断する制限酵素NcoIで消化しアガロースゲル泳動の後Southern blottingでDIG標識したoligonucleotideの5'NCR-probeとHybridizationさせた。(5)塩濃度と温度設定上、最もstringentな条件で膜を洗浄し、HRPOの標識抗DIG抗体でシグナルを検出し、染色体遺伝子上への組み込みパターンを検討した。現在までの実験ではEcoRVで切断した場合、遺伝子への組み込みが、症例および肝細胞毎に同一であれば、Hybridizationはone bandになりclonalな組み込みを意味していた。一方、組み込みがランダムであればsmearになりpolyclonalな組み込みであった。NcoIではHCVのintegrationが確実なものではone bandになった。また、比重遠心法で末梢血リンパ球を型のごとく分離し、同様のDNA解析を行った結果リンパ球DNAにも組み込みが証明される症例が存在した。臨床的な病気の進行状況と比較検討中である。
|