研究概要 |
平成8-9年度本研究補助金の交付以降、申請のプロトコールに基づき、特にType IV collagen(IV-C)の合成、分解の面より、慢性肝疾患におけるIV-C,MMP2,MMP3,TIMP2の動態を生化学的,形態学的ならびに分子生物学的に検討した。 慢性非活動性(CPH),慢性活動性(CAH)から肝硬変(LC)にいたる肝疾患患者検体を用い、血清中MMPs,TIMPsの動態をEIA法により計測、既存の線維化マーカーであるラミニン(LM),IV-C,プロリルハイドロキシラーゼ(PH)ならびにKnodellらのHAI scoreと対比検討した。また組織化学的にマウス抗ヒトIV-C,MMP2,MMP3,TIMP2モノクローナル抗体を用いて酵素抗体間接法を行い、光顕ならび電顕的に観察するとともに、コンピューター画像解析による形態学的定量解析を行った。さらにin situ hybridizationによりm-RNAの発現について検討した。 結果、線維化の進行に伴って血清中LM.IV-Cの上昇が明らかであり、MMP2が平行して上昇した。MMP2の上昇はLM,IV-Cの上昇と正の相関を示し、同時に血清TIMP1の上昇性変化とも相関関係が認められた。組織学的にHAI scoreの増加とともに血清MMP2,LM,IV-C値は上昇し、両者の間に相関関係が認められた。免疫組織化学的検討上、IV-C陽性反応は慢性肝炎では拡大した門脈域の線維増生に一致して見られた。CAHでは一部の類洞壁に沿って観察され、LCでは線維性隔壁と類洞壁に強い反応が示された。MMP2,3の反応はCPHでほとんどみられず、CAHにおいて門脈域の間葉系細胞と血管内皮細胞に軽度認められた。LCでは線維性隔壁内に明かに溶性細胞芻の増加がみられ、一部結節内の類洞壁細胞に陽性反応が見られた。TIMP2はCPHで門脈域の炎症性細胞にわずかに陽性所見を認めたが、CAHでは伊東細胞、マクロファージ系細胞などで陽性であり、LCにおいては陽性細胞数が著明に増加した。In situ hybridizationでもほぼ同様の所見であり、これら間葉系細胞が線維化調節機に関わる可能性が示された。以上より、肝線維化の進行に伴いIV-Cは門脈域より肝小葉内へ増生し、MMP2,3,TIMP2陽性細胞数の増加が明かにされ、血清レベルでのIV-C,MMP2,3の上昇と平行すると考えられた。肝線維化過程におけるIV-Cの増生に、間葉系細胞を中心としたIV-Cの分解とその阻害酵素が強く関与することが示唆する所見と考えられた。 上記成果は平成8年4月日本肝臓学会(神戸),同5月全米消化器病学会(San Fransisco),同9月Asian-Pacific Congress of Gastroenterology(Yokohama)において報告し、現在学術論文を作成中である。
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