研究概要 |
肝細胞癌(HCC)は近年日本では著しく増加しており,その背景に慢性C型肝炎,肝硬変との合併が大きな要因であると報告されている。我が国のいくつかの報告をまとめると,HBsAg(-)のHCC患者では,66-94%がHCV抗体(+)であった。米国では多くのC型肝炎患者はいるもののHCCの発生は日本と比べ低率である(HBsAg(-)のHCC患者では,40%以下がHCV抗体(+))。上海ではHCCの発生が増加しており,B型肝炎とaflatoxin Bが発生の要因と考えられている。こうした背景はHCC発生に人種的差異あることが想定され,癌化の過程には諸種の環境物質が関与していることが想定される事から,解毒に関わる特にP450の遺伝的多型性が果たして関わっているのかについて,米国との共同研究に我々は現在協力実施中である。この中でHCC(+)/(-)のC型肝炎患者及びコントロール患者にDrugcocktail Studyを実施した。米国での報告(Pittsburgh cocktail approach. Frye RF, et al. Clin Pharmacol Ther 1997;62:365-76)はこの前段階のものであり,従来報告されている結果つまり健常人と肝硬変(HCV(+))の群別比較では,polymorphismに差はないと言う結果であった。この点を更に日本人で調査するため,最も顕著な差(Asian vs.Caucasian)があると考えられているDrug metabolizing enzyme CYP2C19についてPCR-RFLP法を用いて検討した。これは最近,遺伝子分析により,薬物を負荷せず,血液の白血球遺伝子の一部をPCRにて増幅し,その相同性と差異からpoorとextensive metabolizerを区別する方法で,Genotype(Exon4,5)の変異を検討する。その結果,肝硬変30例における検討の結果,Extensive Metabolizer 70%,Poor Metabolozer 30%という結果であった。この結果は健常者120例とほぼ一致する。今後Poor Metabolozerの臨床経過がExtensiveと変わりうるのか,肝機能増悪,肝癌発生度合いに違いがあるのかを見ていく必要があると思われた。
|