研究概要 |
家兎摘出潅流肺を用い、種々の条件で呼気NO,灌流液NO代謝産物,肺循環動態を測定した。 1.呼気NOに与える血液ヘモグロビンの影響 摘出灌流肺で潅流液のヘモグロビン濃度を変化させて呼気NOを測定し,呼気NOと血液ヘモグロビン濃度の関係について検討した。結果として,灌流液のみの時の呼気は血液灌流肺の約3〜4倍に増加した。またヘモグロビン濃度に依存して呼気NOは低下した。以上から,内因性NOの大部分は肺法胞を介して肺循環系のヘモグロビンで吸着される。生体においても同様のことが示唆された。 2.呼気NOと肺循環NO代謝産物に与えるアセチルコリンと流量の変化(ずり応力)の影響 アセチルコリンの投与や灌流量の増加により呼気NOは上昇した。一方,灌流液中のNO代謝産物は変化しなかった。NO合成酵素阻害薬は全てを抑制した。無血摘出灌流肺では肺血管内皮由来NOは容易に肺胞・気動へ拡散し、刺激の程度に応じて呼気NOは増減するまた,流量依存性の呼気NOの増加は,肺血管床のリクルートメント現象に重要である。 3.呼気NOおよび肺循環NO代謝産物におよぼす低酸素換気と低酸素血症の影響 肺動脈圧の上昇に先立ち呼気NOは酸素濃度依存性に低下した。この呼気NOの低下は,酸素を基質とした場合の酵素・基質反応速度論に合致した。低酸素血症は呼気NO,肺循環NO代謝産物に影響を与えなかった。以上から,NOは気道上皮内で大気中の酸素を基質として合成されていることが示唆された。このことは気道由来NOの産生系それ自身がいわゆるO_2sensorとしての作用を発揮しているものと考えられる。低酸素性の肺血管収縮や換気・血流の再分配調節において,低酸素刺激を先ず気道上皮が感知し,次に気道上皮由来NOが減少することで,肺血流の調節がなされている可能性が示唆された。
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