研究概要 |
【目的】線維化肺の発症と進展機序におけるエンドセリン(ET)の関与を明らかにするため,ET遺伝子を肺内に導入し肺線維症動物モデルを作成する. 【方法】ET遺伝子を導入する手段として遺伝子安定発現型肺線維芽細胞株を樹立した.8週齢,雄ゴールデンハムスターを,ET産生肺線維芽細胞移植群(ET群),TGF-β産生肺線維芽細胞移植群(TGF-β群),対照肺線維芽細胞移植群(対照群)の3群に分けた.肺線維芽細胞の肺内移入効率を検討するために,以下の2ルートを設定.I経気管的:カニューレを気管内に挿入して投与,II経静脈的:外頸静脈よりカテーテルを右心腔内に挿入して投与. 【結果】経気管的ルートによってのみ肺内への遺伝子導入が可能であった.各遺伝子発現肺線維芽細胞(1x10^7/0.3ml DMEM)を投与後7日,14日目に,各群の気管支肺胞洗浄液(BALF)を検討した.ET群では7日,14日目ともBALF中総細胞数とET濃度の増加を認めたが,他の2群では正常動物と変化なかった.肺組織標本の検討ではET群は実験7日目にすでに肺組織内で広範に肉芽腫形成及びその周囲の肺胞隔壁の肥厚を認めたが,他の2群ではこれらの変化は見られなかった.抗ET抗体を用いた免疫組織学的検討では,ET群に観察された肉芽腫形成細胞に強い発現を認めた. 【結論】生体肺内における肺線維芽細胞の増殖にETはTGF-βより優位に作用する.このことは線維化肺の進展にETが深く関与していることを示唆している.
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