研究概要 |
(1)血清SP-A,SP-D値の陽性率に関する検討;膠原病合併間質性肺炎(CDIP)患者では,「SP-A or SP-D」の陽性率が88.1%,偽陽性率が1.8%であり,したがってSP-A,SP-Dの同時測定は,CDIP患者での間質性肺炎検出を飛躍的に向上させる優れた検査法であることが示された。 (2)血清SP-A,SP-D値解離例の検討;間質性肺炎患者のうち,胸部CT所見でirregular-linear opacity(ILO)が目立ち組織学的に肺胞虚脱と間質の線維化が著しい群では,ground-glass opacity(GGO)が目立ち肺胞II型上皮細胞の再生がみられる群に比較し,SP-D/SP-A比は有意に高値を示した。したがって,末梢気道での上皮再生のheterogeneityが血清SP-A,SP-D上昇の解離に影響していることが示唆された。 (3)血清SP-Aと予後との関係;特発性間質性肺炎(IIP)患者において,3年以上生存例でのSP-A平均値は,3年以内死亡例での値に比べ,有意(p=0.042)に高く,血清SP-A値は予後を推定する指標となると思われた。 (4)放射線照射患者および放射線傷害ラットにおける血清SP-A,SP-D値上昇の意義;肺癌治療を目的に胸部への放射線照射を受けた患者において,間質性肺炎合併例で,非合併例に比較し,血清SP-A,SP-D値は有意に上昇した。また,放射線照射ラットにおいても,病理組織学的に間質性肺傷害がもっとも強く出現する時期に一致して血清SP-A,SP-D値が上昇した。したがって,血清SP-A,SP-Dの変動は疾患活動性を反映していることが動物実験からも示された。
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