研究概要 |
1 麻酔、自発呼吸下のネコで、視床下部外側野を電気的刺激(60-90μA,1ms矩形波,50Hz,10秒間)および化学的刺激(L-glutamate,5-50 nmol)することによって、気管拡張反応を誘発することができた。 2 組織学的検索を実施した結果、電気および化学の両刺激によって気管拡張が誘発された部位は視床下部外側野の吻側部と中間部に限局していた。視床下部外側野の後部では、電気刺激による反応はあったが、化学刺激による誘発は得られなかったので、通過線維が存在すると考えられた。 3 気管平滑筋のβ受容体の興奮は気管拡張を誘発することが知られているので、β遮断薬(propranolol,0.20-0.5mg/kg)をあらかじめ静注してから、上記の視床下部外側野刺激を実施したが、気管拡張反応は影響を受けず、依然として認められた。したがって、非アドレナリン性気管拡張反応であると結論された。 4 ムスカリン受容体阻害剤であるアトロピン(0.05-0.1mg/kg)を静注すると、気管の持続性緊張がなくなるので、視床下部外側野刺激による気管拡張反応は評価し難くなる。そこで、セロトニンを点滴静注して、気管の持続的緊張を回復させながら、視床下部外側野を刺激すると、気管拡張反応が弱くなる傾向を認めた。しかし、アトロピン極量投与することが実験的に困難であったため、非コリン性気管拡張反応であるかについては結論が出せなかった。 5 迷走神経を切断すると完全に気管の緊張が消失するので、セロトニンを点滴静注して気管の緊張を回復させながら、視床下部外側野を刺激した。しかし、気管拡張反応はもはや誘発されなかった。したがって、気管拡張を仲介する視床下部外側野からの下行路は迷走神経を経由すると結論された。
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