研究概要 |
糖尿病(DM)でいかなる神経再生過程がどのような機序で障害されるかを明らかにするため神経損傷後の変性と再生を神経切断と挫滅モデルで検討した。まず、STZ-DMと対照ラットの坐骨神経挫滅後、再生神経の神経伝導検査と形態計測を行い、つぎにDMと対照ラットの坐骨神経切断後、変性線維の形態計測、免疫組織化学、イムノブロット法を行い、軸索変性、貧食細胞の進入、ニューロフィラメント(NF)の分解とリン酸化状態を検討した。以上よりDMで再生線維の伸張速度の低下、数の減少、小径化を認めた。また、ワーラー変性(WD)における神経線維の脱落とNFの分解が遅延し、それはリン酸化NFの増加によると考えられた。DMにおけるNFのリン酸化亢進の機序としては、Cdk5/p35,GSK3β,JNK,ERK,p38といった既報のNFキナーゼの活性化が推察されるため、これらのNFキナーゼのラットの末梢神経系(後根神経節、坐骨神経)における局在とDMラットにおける活性化状態を検討したところ、ラットの末梢神経系でCdk5/p35,JNK,ERKの存在を確認した。さらに、DMでJNK,ERKの活性化が認められた。すなわちDMでは神経再生のうち発芽と成熟いずれも障害されていた。また、DMではNFのリン酸化亢進による分解抵抗性の増大があり、これが軸索変性の遅延をおこし初期の神経再生障害の一因になっている可能性が考えられた。さらに、NFのリン酸化亢進にはJNK,ERKの活性化の関与が示唆された。
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