研究概要 |
Heme oxygenase(HO)はneural m essengerの1つである一酸化窒素およびantioxidant作用を有するbilirubinの産生に関与している。このHOが遅発性神経細胞死に対し神経保護的に作用しているか否かを解明するため、ラット前脳虚血モデルにHOinhibitorであるtin m esoporphyrin-IX(Sn MP-9)、或いはHOinducerであるferriprotoporphyrin IX(FePP-9)を全身投与し、神経細胞傷害へ及ぼす影響およびHO-1(inducible form of HO)の免疫組織学的局在について検討した。まず、雄Wister rat(n=10)の両側椎骨動脈を電気凝固後20分間一過性に両側内頚動脈を閉塞し、再灌流30分後、1日後、2日後の3回SnMP-930μmol/kg(SnMP群、n=4),ないしはFePP-930μmol/kg(FePP群,n=3)を腹腔内投与し、虚血3日後にsacrificeした。虚血を加えないsham群(n=3)、SnPP群、FePP群の脳切片に対しHO-1,tubulin,GFAPの免疫組織学的染色,HE染色を行った。その結果、CA1,CA2,CA3,CA4領域の神経細胞脱落率は、SnMP群で各々90.0±9.0%,93.4±5.0%,31.7±45.9%,27.2±45.1%,FePP群で36.6±49.1%,30.3±40.0%,10.2±11.4%,5.1±4.4%であり、CA2において2群間の有意差を認めた。また、HO-1染色陽性細胞はFePP群のglia細胞に多くみられた。以上より、HOをinduceすると神経細胞脱落が軽減し、逆にHOをblockすると神経細胞脱落が増強したことより、glia細胞由来のHOは遅発性神経細胞死に対し神経保護的に作用すると推察された。
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