研究概要 |
アルツハイマー病脳では,コリン作動性神経細胞の変性脱落がみられ,そのマーカー酵素,コリンアセチル転移酵素(ChAT)の活性低下は,アルツハイマー病隔患者の痴呆重症度とよく相関すると報告されている。我々の本研究の目的は、(1)マウス中野由来のコリン作動性神経細胞株SN6におけるサイトカインの栄養因子としての作用機序の解析,(2)サイトカインやその受容体のノックアウトマウスでの脳の形態学的,細胞生物的学,個体としての学習能の検討,(3)アルツハイマー病脳でのサイトカインやその受容体の変動の解析,(4)アルツハイマー病脳神経細胞での,アセチルコリン代謝,βアミロイド蛋白,プレセニリン異常と,サイトカインその他の炎症性因子との関連の検討によって,アルツハイマー病の病態解明や治療法開発に有用な情報を提供することにある。 (1)については,IL-3は,SN6において,IL-3受容体mRNA発現,ChATプロモーター活性の亢進,ChATおよびアセチルコリン(ACh)トランスポーター(VAChT)mRNA発現,ChAT活性を誘導し,ACh代謝を高め,細胞内ACh濃度に変化をもたらすことを発見した。(2)については,大幅に遅れ,現在IL-3とIL-3受容体βc鎖のダブルノックアウトマウスを作製中である。(3)については,アルツハウマ-病脳よりpoly(A)RNAを抽出し,RT-PCRによって,IL-1やIL-6の増加を見いだした。IL-3mRNAはごく微量なので,サザンブロット解析中である。他,IL-2,GM-CSF,エリスロポエチンやIL-3受容体などを検討中である。(4)はこれからの課題で,いろいろ解決しなければならない問題がある。
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