研究概要 |
ヒトの運動野および補足感覚運動野での運動興奮・抑制の統合機構に関して以下の研究成果が得られた。 1. 慢性硬膜下電極電気刺激によるヒト運動野機能:ヒト運動野の興奮と抑制機序が運動誘発電位(MEP),silent period(SP)の出現に関与し、SP出現には補足感覚運動野や陰性運動野の関与は少ない。 2. ミオクローヌスを呈する患者での研究:磁気刺激と体性感覚誘発電位(SEP)を用いた検討で、ヒト感覚野-運動野間の伝導時間は約4msecであることを明らかにし、C反射の経路が疾患により異なることも明らかにした。 3. 電位依存性Naチャネルの解析による大脳機能の検討:ラット脳に高頻度磁気刺激(rTMS)を7日間連続で行うと、22Naイオンの取込は大脳皮質で、刺激終了直後、14日後に有意な活性増強がみられ、終了後28日目に非刺激群と同じ活性となった。海馬では有意な活性の増強はみとめなかった。rTMSによる大脳での電位依存性Naチャネル活性変化は可逆性であることを明らかにした。 てんかん患者の側頭葉切片での解析では、てんかん焦点部位での電位依存性Naチャネルは質的に正常だが、量的には減少傾向であった。このことは、切除したてんかん焦点部位では、大脳神経細胞の過剰興奮はないことを示している。 4. 片麻痺患者での検討:ヒト大脳運動野は原則的には交叉して対側上下肢の運動に関与しているが,まれに,同側上下肢を支配する錐体路非交叉や両側錐体路支配があることを神経生理学的に明らかにした。このような症例では体性感覚路も非交叉性であった。
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