研究概要 |
酸化LDL中のリゾレシチン(LPC)は太い摘出血管で、内皮のNO産生を障害する。しかしin vivoでは、LPCはアルブミンと速やかに結合し、in vitroと同様の作用を有するかは不明である。また、冠微小動脈の内皮機能を障害しうるかも不明である。本研究ではLPCを冠動脈内投与し、in vivoで微小循環にどの様な障害を与えるか検討した。 実験には麻酔開胸犬を用いた。左前下行枝(LAD)で灌流される左室前壁の微小動脈を、浮動型対物レンズ顕微鏡(CircRes,Ashikawa et al., 1986)による蛍光造影法で観察した。プロトコール1(n=9)では、LPC投与群(L,;,10^<-7>mol/kg/min, 60min, n=3)または、その溶媒(Krebs液)を投与した対象群(C;n=6)に、投与終了10分後から、10^<-10>,10^<-9>,10^<-8>,10^<-7>mol/kg/min(各々5分)のB-HT920(α_2-agonist)を投与、最後に10^<-4>molのニトロプルシド(NP)を心外膜側より滴下した。プロトコール2(n=6)ではプロトコール1と同様にLPC(n=2)またはKrebs液(n=4)を投与し、投与開始30分後に1.5mg/kgのインドメサシンを静注してプロスタノイドの作用を抑制した。LPCまたはKrebs液の投与終了10分後より、ブラジキニン(BK)を10^<-12>,10^<-11>,10^<-10>,10^<-9>mol/kg/min(各々5分)で投与し最後に10^<-4>molのNPを心外膜側より滴下した。B-HTの投与により、C群(19vessels)、L群(11vessels)ともに冠微小動脈は用量依存性に収縮したが,10^<-8>及び10^<-7>mol/kg/minではL群でより強い収縮が認められた(-12.9±1.4%vs-20.8±2.4%^*,-19.3±1.4%vs-28.2±2.9%^*,^*p<.05vsC)。しかしBKによる内皮由来拡張は何れの濃度においてもLPCにより影響されなかった。またNPの作用は何れの群でもLPCにより影響されなかった。α_2-agonistによる血管収縮作用が増強しBKの作用が不変であることより、LPCは生体内においても冠微小動脈のGi蛋白を介するNOの産生を障害すると考えられた。
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