研究概要 |
心筋L型Caチャネルに対する交感神経α受容体の作用については一定の成績が無く不明な点が多い。こうした受容体を介した情報の伝達経路や調節機序はこれまでnative cellを用いて検討されてきたが、受容体のsubtypeの存在や情報のクロストークなどのため、他のシステムを含まない純粋な実験系が望まれていた。BHK細胞には固有の交感神経α,β受容体は存在せず、これに心筋由来のL型Caチャネルα1サブユニット、骨格筋由来のβとα2/δ,γ各サブユニットを組み込むとCaチャネルをstableに発現させることができる(BHKC12細胞)。このCaチャネルはPKAやPKCを活性化させる操作で修飾を受け、nativeのものに極めて近い電気生理学的特性を示す。そこで我々はBHKC12細胞に交感神経α1受容体を組み込み,α受容体刺激のCaチャネルへの作用を検討した。lipofection法を用い,α1受容体(bovineC型,Lefkowitz教授より供与)をBHKC12細胞にtransientに発現させると、β-galctosidaseを用いた間接評価では約50%の細胞でレセプターの発現が期待できた。このlipofectionを行ったBHKC12細胞を用い、phenylephrine投与による電流変化を検討した。nystatin法による全細胞電流記録で検討すると、7/13の例でCa電流が平均1.3倍に増加し、残りの6例は反応が見られなかった。またcell attach法による単一チャネル電流記録では14例のうち6例でのみチャネル開口確率が1.2-2.5倍に増加した。これらの増強はmethoxamineによってももたらされ、またprazosinはこの増大を抑制したことから、transfectionされたα1受容体を介した作用であると考えられた。
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