研究概要 |
レニン・アンギオテンシン系は、生体における体液量や血圧の維持に大切であることが知られていたが、近年、(1)心筋を含む組織レベルのアンギオテンシンIIが、レニンの上昇がなくとも増加すること、また、(2)受容体結合実験で心筋にもアンギオテンシン受容体が豊富に存在すること、などが明らかにされた。アンギオテンシンIIの働きとして、強心作用や急性心筋梗塞後の心室リモデリングに関与していることが判明した。したがって、組織で産成されるアンギオテンシンが、心筋細胞にautocrine/paracrine的に作用する可能性が大である。一方、アンギオテンシン刺激は、従来、膜の燐脂質代謝を促進し、IP3,diacylglycerol,arachidonic acidの産成を促進してprotein kinase C活性を増加されると考えられている。もうひとつの重要な膜刺激伝導系のprotein kinase Aについては、未だ良くわかっていない。本研究課題で、われわれは、心筋におけるアンギオテンシン受容体の刺激伝達機構を解明するのに、唯一、protein kinase Aにより制御を受ける心筋のCFTR型クロライド・チャネル電流の活性をパッチクランプ法にて観察し、これを指標として検討した。また、radioimmuological assay(RIA)により直接、心筋細胞内のcAMPレベルを定量することにより電気現象として観察されるクロライド電流の生化学的背景を明らかとした。その結果、従来、報告されてきたprotein kinase Cに対する活性化の作用とは別にアンギオテンシンI型(AT1)受容体を介したprotein kinase A活性に対する抑制作用が存在することを明らかとした。一連のこれに関する研究は1997年初めに刊行されたアメリカ心臓学会誌のCirculationに発表の機会が与えられた(11研究発表を参照)。
|