研究概要 |
吻側延髄腹外側野(rostral ventrolateral medulla;RVLM)における興奮性アミノ酸と一酸化窒素(NO)の血圧調節に対する役割について検討した。 実験には、未治療およびACE阻害薬であるenalaprilで8週間治療した高血圧自然発症ラット(SHR)、対照として正常血圧のWistar-Kyotoラット(WKY)さらにWistarラットを用いた。ウレタン麻酔下に延髄腹側面を露出してRVLMに多管微小ピペットを刺入し、L-グルタミン酸(L-Glu,2nmol/50nl)、イオン調節型グルタミン酸受容体アゴニスト(NMDA20pmol)、代謝調節型グルタミン酸受容体アゴニスト((1S,3R)-ACPD,1nmol)、NO放出薬(NOC-18、1-10nmol)、NO合成阻害薬(L-NAME、1-10nmol)、NOの基質であるL-アルギニン(L-Arg、10nmol)を微量注入し、血圧、心拍数を記録した。 L-Glu、NMDA、(1S,3R)-ACPD注入による昇圧はSHRがWKYに比し大であった。同様にenalapril治療により血圧の上昇を防止したSHRにおいても昇圧反応性は亢進していた。NOC-18およびL-ArgをWistarラットのRVLMに注入すると降圧が、L-NAMEを注入すると昇圧が惹起された。NOC-18およびL-Argによる降圧はSHRがWKYに比し大であった。 以上のことより、SHRでみられるアミノ酸受容体刺激に対する反応性の亢進は遺伝的要因に基づいた特性であること、NOはRVLMニューロンに対して抑制性に作用することにより降圧をもたらし、SHRにおいてこの系の作動不全がある可能性があることが示唆された。
|