研究概要 |
高コレステロール血症は欧米においては心血管病の重要な危険因子であることが証明されているが,日本においてコレステロールと心血管病発症の危険についての研究は未だ十分ではない.沖縄県は地理的特性により,心血管病発症の疫学には好個の地である.我々は1988年4月1日から1991年3月31日の間に沖縄県において心血管病の発症を調査した.その結果3年間に1,021例(男674名,女347名)の急性心筋梗塞が起こっていた.一方1983年度の地域住民検診受診者のうち38,053名(男17,859名,女20,194名)についてコレステロール値が判明していた.これらの検診受診者のうち65名(男41名,女24名)が1988年4月1日から1991年3月31日の間に急性心筋梗塞を発症していた.検診受診時のコレステロール値で検診受診者を4等分しそれぞれの区分中の発症率を比較した.血清コレステロールの区分は167mg/dl以下,168〜191mg/dl,192〜217mg/dl,218mg/dl以上である.それぞれの区分での心筋梗塞の発症率(人工10万対)は42.1,133.5,188.9,323.0とコレステロール値が高いほど,心筋梗塞の発症率は高かった.多重ロジスティック分析では血清コレステロール167mg/dl以下の群に比し,血清コレステロール値218mg/dl以上の群の急性心筋梗塞のOdds比は1.66(95%信頼区間1.29〜2.15)であり,高コレステロール血症は心筋梗塞の独立した危険因子であった.
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