研究概要 |
1.培養血管平滑筋細胞の肥大における転写因子の関与 (1)angiotensin II(AII)により肥大させたSprague-Dawleyラットの培養血管平滑筋細胞(VSMC)に、cationic liposemeを用いて転写因子Sp1と、STAT1、STAT2の認識配列であるISRE、GAS、SIEに対応したDNA decoyの細胞内導入を行い、対照としては、random DNA decoyを用いた。 (2)Spl、ISRE配列、ISE配列またはGAS配列をもつ0.2μM濃度のDNA decoyの導入により、A II刺激後の培養VSMCにおける3H-leucineの取り込みはそれぞれ減少し(69%,58%,66%,41%)、これらの減少はdecoyの濃度に依存的であった。同時に、PDGFのA鎖のmRNA量および3H-thymidineの取り込みも減少したが,random配列のDNA decoyの導入では以上の変化は認めなかった。VSMCの肥大にSTAT系転写因子の関与が示唆された。 2.高血圧自然発症ラットの高血圧性動脈硬化病変における、STAT1、STAT2の関与 (1)15週齢の高血圧自然発症ラット(SHR)の胸部大動脈中膜において、ISRE、GAS、SIEを含む2本鎖DNAをプローブとして、各転写因子量を測定した。 (2)GASならびにSIE配列結合性の転写因子は約20%の増加を認め、PDGFのA鎖の遺伝子発現量は約30%増加し、これらの増加はA II受容体拮抗薬により抑制された。STAT系転写因子は高血圧性動脈病変に関与する可能性が示唆された。 3.SHRの大腿動脈へのDNA decoyの細胞内導入による高血圧性動脈硬化病変の変化 (1)SHRの大腿動脈にISRE配列、SIE配列またはGAS配列をもつDNA decoyを導入した結果、血圧の変化は伴わずにhypertrophy indexはそれぞれ減少した(85%,88%,81%)。 (2)組織学的な検討では各DNA decoyの投与により、動脈中膜の断面積の減少(〜10%)を認めた。Random配列のDNA decoyの導入では以上の変化は認めなかった。高血圧性動脈壁肥大の進展にはA IIを介したJak/STAT系の関与が示唆された。
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