研究概要 |
本研究の目的は急性虚血-再潅流心におけるα1遮断薬の単相性活動電位持続時間(MAP)ならびに心筋内相、外相電位再分極相への作用がKATPチャネルを介するか否かを検討することにある。麻酔ビ-グル犬を用い、左冠動脈第1と第2対角技を結紮し虚血心を作成した。MAP90、MAP立ち上がり速度(mV/ms)、心筋内層と外層(虚血域と正常域各2点)のQRS時間、QT時間、JT時間を測定した。KATPチャンル開口薬はY26763(Y)、遮断薬はGlibenclamide(GB)、α1遮断薬はBunazosin(BN)を用いた。 (1)α1遮断薬BN、KATPチャネル遮断薬GBとも急性心筋虚血における短縮したMAP90を延長した(BN,P<.05,GB,P<.01)。しかし、GBを先行投与すると(MAP90,239±42ms)BNを投与してもそれ以上のMAP90延長はなかった(MAP90,242±46ms)。 (2)KATP開口薬Yは濃度上昇に相関して(0.4μg/kg,2μg/kg,4μg/kg)、虚血域MAP90を短縮させ、2μg/kg,4μg/kgでは各々対照との間に有意差があった(各p<.05,.01)。一方、Yの各濃度にBN0.1mg/kgを併用投与した群ではMAP90短縮の程度は小さく、Y4μg/kg単独のMAP90は135±24msであったのに対しY4μg/kg+BN0.1mg/kg併用投与のMAP90は183±19msであった(p<.05)。 (3)GB群、Y群、Y+BN群とも冠結紮後1分、4分でのMAP立ち上がり速度、QRS幅は対照に比べ有意な変化はなかった。 (4)以上より、α1遮断薬は急性虚血心筋における短縮した活動電位持続時間(再分極相)を延長する作用があり、その機序としてKATPチャネル機能の抑制が示唆された。
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