研究概要 |
左室は,駆出末期に弛緩を開始する前に,駆出の方を先に停止するという性質を持っている.左室が自ら駆出を停止すると,それ以前に速度を得ていた血液は自らの慣性力(運動量)で左室から大動脈へ流出しょうとするので,左室心筋の弛緩開始前であっても左室圧は急速に低下する.この圧低下は,左室にとっては収縮末期の後負荷軽減となる.収縮末期の後負荷軽減は,それに続く等容弛緩期を短くし,さらに左房からの血液流入も速くする,つまり,左室の拡張機能を高める. 以上の考察より,我々は,正常な心臓では血液の慣性力の効果が強く現れるが,病的心臓では慣性力の効果は小さいか全くみられないという仮説を立てた.この仮説を検証するために,左室圧とその時間微分からフェイズループを作り,これを利用して血液の慣性力の効果の大きさを定量的に評価する方法を考案した. この方法を虚血性心疾患25例に応用したが、慣性力の大きさは,左室拡張末期圧,心係数,心拍出量係数,駆出率,Peak negative dP/dtと有意(p<0.05)の相関を示した.また,運動負荷テスト中の慣性力の増強の程度は,運動耐用能の高い例ほど大きいことが明らかとなった.これらにより,我々は,血液の慣性力は心臓の動作状態を示す新しい指標であると結論した.
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