梗塞心筋細胞にいつからアポトーシスならびに抑制因子Bcl-2が発現するかを明らかにするために、ウサギの心の左冠状動脈の分枝部を閉塞し、30分虚血・再灌流モデルを作製した(30分虚血群、30分虚血・30分再灌流群、30分虚血・2時間再灌流群、30分虚血・4時間再灌流群、30分虚血・8時間再灌流群、30分虚血・24時間再灌流群、各5羽)。アポトーシスについては、DNA ladderおよびin situ nick end labeling法でDNA fragmentationの有無により検討した。Bcl-2蛋白の発現はウエスタンブロット法および免疫組織学的に、bcl-2 mRNAはノーザンブロット法にて検討した。 梗塞心筋組織のDNA ladder陽性およびin situ nick end labelling陽性心筋細胞は30分虚血群、30分再灌流群ではみられなかったが、2時間再灌流群ではみられた。通常、梗塞サイズは再灌流30分以内には決定されると考えられているので、再灌流2時間以後に出現するDNA fragmentationが梗塞サイズにどの程度影響するかは今後の課題である。 アポトーシス抑制因子Bcl-2蛋白はウエスタンブロット法では、再灌流24時間群で虚血領域の心筋組織に明らかなバンドとして、免疫組織学的には再灌流8時間後に梗塞周囲の残存心筋細胞に発現した。ノーザンブロット法によるbcl-2 mRNAも再灌流24時間で発現を確認した。Bcl-2蛋白の発現は、再灌流早期にはみられないため、虚血再灌流早期の心筋細胞死に影響するとは考えられない。しかし、近年、心筋梗塞後のlate cell deathの存在や梗塞後のremodelingとアポトーシスの存在が問題になっている。したがって、再灌流後期におけるBcl-2の発現は上記のremodelingやアポトーシスに何らかの影響をもつ可能性を示唆する。
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