血小板膜上でGPlbと複合体を形成しているGPIXについては、その生理的機能に関する報告はなされていない。そこで、GPIXの生理的機能を解明するために、抗GPIXモノクローナル抗体(KMP-9)を作成し、エピトープの解析、合成ペプチドを用いた中和実験等を通じ、KMP-9のずり応力惹起血小板凝集(SIPA)に対する影響を解析した。KMP-9は、高ずり応力惹起血小板凝集(h-SIPA)を抑制し、マルチピン合成ペプチドによるエピトープのスクリーニングでは、GPIXN121-N130のペプチドに対して陽性であった。また、プロテアーゼV8処理血小板におけるWestern blottingの検討では、C末端8kDの部位を認識した。KMP-9F(ab')2は、KMP-9lgGと同様、GPIXのC末端8kDの部位を認識することが確認された。h-SIPAに対する抑制の程度は、KMP-9F(ab')2およびKMP-9lgGの間に有意な差は認められなかった。また、合成ペプチドは最大1mMの濃度においてもh-SIPAに対して影響を及ぼさなかった。以上より、KMP-9のh-SIPAに対する抑制において、KMP-9のFc部分は関与していないと考えられた。また、そのメカニズムとして高ずり応力下においてGPIXがvon Willebrand factorとの結合ドメインを有し、その結合をKMP-9が阻害している可能性は低いと考えられた。
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