研究概要 |
I.高血圧の発症・維持におけるG蛋白質の役割 高血圧発症前期の自然発症高血圧rat(SHR)を用いて免疫組織化学により末梢細動脈のGi,Gs蛋白質の量を正常血圧ラットさらに二次性高血圧ラットと比較検討。大動脈の変化も比較検討。機能的検討はβ-AR-Gs系,α2-AR-Gi系の検討をin vitroにて検討。免疫組織学的検討:4,10,20週齢のSHRと対照のWKYを比較。右腎摘出左腎動脈狭窄ラット(RHR)も使用。一次抗体に抗Gsα,Giα蛋白質抗体、二次抗体にHRP標識抗ラビットIgGを用いた。機能的検討:4-5週の右睾丸挙筋の径約100μmの最小動脈を摘出しピペットにて固定、血管径を計測。β-AR-Gs系はatenolol存在下のisoproterenolを、α2-AR-Gi系はUK13401の濃度反応曲線をSHRとWKYを比較し、さらに百日咳毒素(PTX)によるGi遮断の効果を比較。結果;SHRは各週齢共にWKYと比べ免疫組織学的濃度が低下。RHRはWKYと有意差がなかった。大動脈ではSHR,WKY,RHRに有意差は認めなかった。β2-ARによる血管拡張反応はSHRにおいて有意に低下。nitroprussideによる血管拡張反応はSHR,WKY間には有意差はなかった。α2-AR-Gi系による血管収縮はSHRで現象を認めPTX処置にて同程度まで減少したことよりα2-AR-Gi系の減少はGiの減弱によると考えられた。高血圧発症以前の早期より末梢の細動脈レベルの平滑筋でのGs蛋白質量が低下し機能の低下が認められたことよりSHRの高血圧発症においてβ受容体-G蛋白質系の低下による血管拡張反応の破綻が一因である可能性が示唆された。代償的にGiの減少による収縮低下をきたしていることが考えられた。 II.心不全における末梢血管平滑筋のGTP結合蛋白質の役割 心不全modelにおける末梢抵抗血管でα2-AR-Gi系の機能面を検討。ratの冠動脈結紮による心不全ratに選択的α2-agonistであるUK-14,304の濃度反応曲線を描き百日咳毒素(100nM/ml)処置後再びUK-14,304の濃度反応曲線を描き比較検討,心不全時、α2-ARを介する細動脈収縮機能は減弱するが、この変化にGiは関与せず、α2-AR自体の機能的変化と考えられた。Giの量的検討とGsの量的・機能的検討は現在検討中。
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