研究概要 |
新しい降圧ペプチド、アドレノメデュリン(AM)の血中濃度は種々の循環器疾患において上昇しているが、身体各部位の血中濃度には明らかな違いがなく、循環血液中のAMは主として血管壁の内皮細胞や平滑筋細胞に由来することが推測される。本研究では、AM遺伝子の5′上流領域DNAをルシフェラーゼ・ベクターに組み込み、ヒト大動脈由来培養血管内皮細胞(HAEC)に導入し、プロモーター活性を検討した。ヒトAM遺伝子5′上流領域は、HAECにおいて、SV40ウィルスのプロモーターの1/10程度の発現活性を示した。DNA鎖長を漸次短くしていくと、100base付近で約40%,50base付近で約80%発現活性が低下し、TATA boxを失うとほとんど発現活性がなくなった。転写開始点より上流-85〜-93baseの部位にはNF-IL6,-33〜-68baseには7つのAP-2結合部位のコンセンサス配列が存在し、NF-IL6の3塩基に変異を導入するとルシフエラーゼの発現が42%低下した。また、センス,ノンセンスのオリゴDNAを用いたゲルシフト・アッセイにて、HAECより抽出した核蛋白中にNF-IL6およびAP-2のコンセンサス配列と特異的に結合するバンドが認められた。以上の成積より、ヒト血管内皮細胞においてAM遺伝子の発現にはRNAポリメラーゼのTATA boxへの結合が重要であり、その他に転写因子としてNF-IL6やAP-2が発現調節に関与すると考えられる。IL-1,TNFなどのサイトカインやLPSはAM産生を刺激するが、これには転写因子としてNF-IL6が関与することが推測される。また、我々は血中のAMとノルエピネフリンが正相関することを観察したがα1受容体によるホスホリパーゼC,プロテインキナーゼCの活性化がAP-2を介し、AM遺伝子の発現を促進する機序が考えられる。
|