研究概要 |
実験には遺伝的異常が証明されている完全型単独成長ホルモン(GH)欠損ラットモデルであるSpontaneous Dwarfrat(GHDラット)、およびSprague-Dawley(SD)ラットを用いた。出生直後より下垂体一性腺系を抑制することによる成長および血中Insulin-like growth factor-1(IGF-1)濃度の変化について検討した。10-15週齢のGHDラットを交配し、新生仔ラット(生後48時間以内)に対してGonadotropin releasing hormone(GnRH)アナログ(GnRHa:Leuprolide acetate depot)の皮下注射(2mg/kg/dose)を開始した。GnRHaは3週ごとに投与した。毎週体重測定を行い、15週令に殺処分し肝臓、精巣を摘出した。対照群として生理食塩水投与群を設定し、効果を比較した。 (結果)いずれも15週齢でのデータを示す。雄では精巣重量(対照vsGnRH;SDラット1.89±0.13vs1.22±0.06g,GHDラット0.70±0.06vs0.46±0.03g,p<0.05)、および血中Testosterone濃度(SDラット260.7±152.4vs59.1±23.3ng/dl,GHDラット154.1±83.5vs48.9±23.1ng/dl)がGnRHa群で対照群に比して有意に低値であった。雌ではGnRHa群で肉眼的に明らかに子宮、卵巣の発育が不良であり、血中Estradiol濃度の有意な低下(SDラット25.2±12.9vs5.3±2.0pg/ml,GHDラット14.0±5.9vs5.2±0.5pg/ml,p<0.05)が認められた。以上よりGnRHaの投与は両性において明らかに性腺機能を制御した。また、雄においてはいずれのラットにおいても両群間に有意な体重差がみられなかった。(SDラット551.0±43.4vs560.7±27.2g,GHDラット88±15vs91±12g)が、雌ではSDラットにおいてのみGnRHa群が対照群よりも有意に重かった。(SDラット283.3±8.1vs351.0±31.4g,p<0.05,GHDラット79±15vs79±16g)。血中IGF-1濃度はいずれのラットでも両性において二群間で有意差は認めなかった。(雄:SDラット957.6±173.4vs976.0±96.7,GHDラット11.5±1.3vs10.3±1.0,雌:SDラット460.0±167.0vs534.7±74.2ng/ml,GHDラット11.0±1.8vs11.6±3.1ng/ml)。 (考察)正常ラットであるSDラットでは、GnRHaによる性腺機能制御は、雄では体重増加、血中IGF-1濃度、肝GH結合能のいずれにおいても有意な変化をきたさず、一方雌に対しては体重を増加させたが、血中IGF-1は変化なかった。GHDラットにおいてはSDラットの雌において認められた体重変化を認めず、したがってこの変化はGH分泌動態を介した変化であると考えられた。また、両性において性腺抑制による血中IGF-1の変化はみられなかった。しかしながら、正常ラットでは肝GH結合能が雌ではGnRHaによって有意に低下しており、現在GHDラットにおいて検討中である。
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