研究概要 |
本研究においては以下のことが明らかとなった。 1、神経芽細胞腫株N-KASは細胞基質間接着依存性に増殖する。 1)神経芽細胞腫細胞株N-KASはトランスウェル培養器を用いて間質細胞株を共存させた条件下では、培養開始後3週間目まではN-KAS細胞の増殖が認められたが、それ以後の増殖には間質細胞との接着が必要であった。 2)N-KAS細胞培養系に各種増殖因子(G-CSF,GM-CSF,SCF,EPO,IL-1β,IL-2,IL-3,IL-4,IL-6,IL-7,NGF)を添加したが、いずれの場合に於いてもN-KAS細胞の増殖は支持されなかった。 3)ラミニン、コラーゲンタイプIV、フィブロネクチンをコートしたディッシュ上においてはディッシュに付着して増殖したが、ポリ-L-リジンをコートしたディッシュ上ではその増殖は認められない。 4)細胞外マトリックスをコートしたディッシュを用いても、培養液中に抗CD29(β1-インテグリン)抗体(4B4)を添加すると、N-KAS細胞はディッシュには付着せず、その増殖も抑制された。 2、神経芽細胞腫株N-KASにおいてはβ1-インテグリンを介した細胞基質間接着が生化学的なシグナルを細胞内に伝達する。 1)ラミニン、コラーゲンタイプIVをコートしたディッシュ上において増殖するN-KAS細胞においては、β1-インテグリンを介したシグナル伝達系におけるアダプター分子p130Casのチロシンリン酸化の増強が認められた。 2)Focal adhesion kinase(FAK)の関与について検討したところ、ウェスタンブロット法による解析上N-KAS細胞においてはFAKの発現が認められなかった。 3、神経芽細胞腫株N-KASにおけるアポトーシス;FITC標識AnnexinVとヨウ化プロビジウムを組み合わせた二重染色によるフローサイトメトリー法により解析した。細胞外マトリックス上で増殖するN-KAS細胞においてはFITC標識AnnexinVは陰性であるのに対し、浮遊状態にあるN-KAS細胞では弱陽性を示し、アポトーシスの初期段階にあることが示唆された。
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