研究概要 |
心筋障害による心電図再分極異常の定量的評価とその成因の非侵襲的な解明を試みた。再分極異常はQRST積分値図により評価し、その所見を定量化した。また、心電図波形より求められるactivation recovery interval(ARI)は局所の活動電位持続時間と相関するとされており、この所見によってこの再分極異常の成因を究明した。 100例の正常小児と臨床的に心筋障害が疑われる24例を対象とした。100例の正常小児は年齢による所見の違いをみるために、0-2,3-5,6-8,9-11,12-15の年齢層に分けた。心筋障害を疑われる例を含めた各例の再分極は、QRST積分値所見を年齢に対応する日本循環器学会体表面電位図基準作成委員会の年齢別正常値の所見との相関係数R値によって行った。 正常のQRST積分値図は、年齢ごとにほぼ一定の所見が見られるが、年齢によりその分布が若干変化した。心筋障害を有する病的な状態では、QRST積分値図所見は同年齢層の正常例での所見と比較して変化した。このことを応用してQRST積分値図による日循正常値と比較した相関係数Rを用いた定量的判定が可能であった。正常例での相関係数Rは、各年齢層において0.88〜0.92と非常に高い値であった。また、そのばらつきを表す標準偏差も0.041〜0.067と低値であった。心筋障害例では、その程度を反映したR値の変化が見られ、心筋障害がある例では低いR値となった。これは、心筋炎、特発性あるいはアントラサイクリン系の薬剤性心筋症、心筋梗塞、先天性冠動脈奇形など原因によらない心筋障害を定量的に判定できた。さらにARI等時線図を用いた検討により、心筋障害では、局所のARIの延長、すなわち活動電位持続時間の延長が示唆され、このことが心筋障害における再分極異常の成因の一つと考えられた。
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