研究概要 |
(1)細胞内抗酸化酵素の成長発達に伴う組織内濃度の推移を免疫蛍光染色画像解析法で定量化し,CuZnSOD,MnSOD,細胞内GPXのいずれもバランスした増加が胎生日齢が進むにつれて認められ,特に抗酸化酵素の防御機構が重要な上皮性組織において定量的な成績が得られた.(2)血漿GPXのロケット免疫電気泳動法を開発し,酵素蛋白の比活性の測定を可能性にした.(3)免疫酵素電顕法(免疫金粒子ラベル法)による細胞内GPXの細胞内局在については,ラット肺マクロファージとII型肺胞細胞において高濃度なGPXの局在を明らかにし,ミトコンドリア,核,細胞質基質および他の部位における分布が肝細胞と同様であることを示した.トランスロケーションシグナルを検索することの重要性が再認識された.(4)細胞内GPXの培養細胞における一過性に発現では正常の約3倍のコピー数のGPXを発現させ,細胞内分布を明らかにした.(5)ヒトガン細胞由来の培養細胞におけるラットGPX恒久的過剰発現では正常の約30倍のコピー数のGPXを発現させ,一過性過剰発現モデルよりもさらに明らかな細胞内分布の差を得ることができた.(6)セレン欠乏ラット腎組織中の細胞内GPXと血漿GPXの発現が低下する機構についての研究では,血漿GPXが腎近位尿細管で合成され,ほぼ完全に血中に分泌されることが分かった.セレン欠乏においては翻訳前,翻訳時および翻訳後の各段階でどちらの酵素においても発現の抑制を受けることが明らかになった.(7)家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)における神経細胞封入対におけるCuZnSODの局在についての研究では,多施設との共同研究で,変異SODを有するFALS患者の神経組織の特異的封入体において,SOD免疫活性が増加しておりgain-of function説を支持する所見と思われた.
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