研究概要 |
QT延長症候群は洞性徐脈の症例が多いことが知られ洞機能の異常について議論がある.今回検診で発見されたQT延長症例の運動負荷試験から心拍数の上昇を検討した. 対象は学校心臓検診で発見されたQT延長(QTc>0.46秒)の評価のために名古屋大学小児科でトレッドミル運動負荷検査を施行した54例(男:女=23:31,平均年齢11.6±2.8歳)である.負荷量が十分であったかどうかの判定には我々のoxygen uptake efficiency slope(QUES)から求めたVO2max推定値の0.9以上を使用した. 相対的な負荷強度の指標であるVO2max-measured/VO2max-estimatedは平均110±10%((93-123%)であり,全体として十分な負荷が達成できた.一方,平均最大心拍数は183±14bpm(予測値=220-年齢の88±7%)であり,得られた負荷強度に比して低い値であった.そのうち最大負荷時の心拍数の85%に達しない心拍応答不良群は16例,85%以上の心拍応答正常群は38例であった. この様にQT延長症例には運動時心拍数の上昇が正常とは異なるパターンを示す症例があることが知られていたがこのような系統的な研究はほとんどない.この機序に関しては詳細は不明であるが,心筋の活動電位と洞結節の歩調取りの両方に共通するイオンチャネル自体またはそれらを調節する蛋白の異常に起因する可能性がある.今後T波の形状や遺伝子異常についての研究を引き続き行う予定である.
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