研究概要 |
肥満発生機序の検討を目的として,ラット脂肪組織より得られた脂肪前駆細胞を用い,無血清培養下で,C-キナーゼの脂肪細胞分化に及ぼす作用と発現を検討した.検討は位相差顕微鏡およびOil-red-O染色による形態学,glycerol 3-phosphate dehydrogenase(G3PDH)活性,ウェスタンブロッティング法によるPKC各分子種発現によった. 無血清培養下で約10日後に50%に近い細胞がインスリン,トランスフェリン,T3存在下に脂肪細胞に分化した.PKC活性抑制作用を有するH7およびstaurosporine添加により脂肪細胞分化が促進した.脂肪細胞分化はTPA添加により抑制され,H7およびStaurosporineはTPAの分化抑制作用を解除した.一方,PKC活性抑制作用を有しないHA1004には分化促進作用はなかった.PKC分子種発現の検討では,分化に伴いPKC-α,-δ,-ε,-ζが発現した.分化段階に伴った経時的検討では,各分子種の発現に差違が認められた.TPAによりPKC-αおよび-δはダウンレギュレートされた.PKCはラット脂肪前駆細胞の分化過程に対し抑制的に作用すると考えられ,また,脂肪細胞に関与するPKC分子種間における作用の差が存在する可能性を示唆する.
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