研究概要 |
1.ATP7Aおよび7B蛋白の細胞内銅輸送機構に関する検討 ATP7A・7B蛋白の銅結合部位対する抗体を作成した.これらを用いてATP7A・7B蛋白の細胞内局在と,銅負荷による変化を検討した.ヒト由来の培養細胞において,ATP7A・7B蛋白はともにGolgiからendosomeかけて局在,trans-Golgi network (TGN),に認められた.また銅負荷によってその局在はTGNからpost Golgi vesicular compartmentに変化していた.また,その後の銅除去により,再びTGNに戻ることが認められた.これらの結果より,ATP7A・7B蛋白は通常TGNに存在し,銅が細胞外より入ってきた場合それと結合して輸送小胞をつくり,細胞内銅輸送を行うことが推察された. 2.Wilson病症例における遺伝子構造異常と臨床症状・病態との関連に関する検討 Wilson病の原因遺伝子(ATP-7B)の構造解析を行い,変異を有する遺伝子より合成される蛋白の形態・機能と,臨床病型との関連を検討した.各病型の本症患者におけるATP-7Bの変異を解析・検討した.その結果,肝型Wilson病においては1塩基欠失が,特に劇症型など肝障害の強い症例にて認められた.これに対し,神経症状を呈した症例においては,点突然変異が多くみられた.1塩基欠失はフレームシフトを生じ,truncated proteinが産生される.蛋白の構造としては著しく障害されており,ほとんどその機能を失っていると推測される.しかし,点突然変異においては蛋白がある程度その機能を有する可能性が考えられる.ATP-7B蛋白の機能障害の程度により臨床病型が規定されている可能性が示唆された.特にフレームシフトを生じる変異,すなわちtruncated proteinの産生は強い肝障害を引き起こす可能性が推測された.
|