研究概要 |
平成8年度の研究で,I型コラーゲンの成熟型分子間架橋であるhistidinohydroxylysinonorleucine(HHL)を,微量皮膚サンプルでも迅速にpMレベルで測定する方法を確立した.平成9年度には本方法を臨床研究に応用する手始めに,病的線維化疾患である全身性強皮症皮膚(systemic sclerosis,SSc)におけるHHL量の変化を検討した.その結果,SSc患者硬化部皮膚のコラーゲン1分子当たりのHHL量は対照とした正常人の約2倍に増加していた.このデータは,SScの病変部コラーゲンの質的異常を初めて示したものである.SScにおけるコラーゲンの均質化・硝子化という光顕的異常所見にHHLの増加が反映されているのではないかと推定している.また,分子間架橋が増えることによりコラーゲンの安定性が増し,分解を受けにくくなることが強皮症におけるコラーゲン蓄積に関与している可能性が推定された.現在,HHLの増加が強皮症に特異的な変化であるか確認するため,他の皮膚線維化疾患についても検討虫である. HHLの形成は細胞外に分泌されたコラーゲンがlysyl oxidase依存的に自動的に進むと考えられている.強皮症患者皮膚および内蔵においては血管内腔が狭小化しており,組織に低酸素および低栄養状態がもたらされている.三次元培養系の低酸素条件下では,細胞層のコラーゲン量はほとんど不変であったが,HHL量は著明に減少した.なお,低酸素,低栄養あるいは低栄養【symmetry】低酸素条件は単層培養系ヒト真皮線維芽細胞のTGF-β mRNA発現の上昇とMMP-lmRNA発現の低下をもたらしたが,lysyl oxidaseの発現には変化が無かった.今後,培養条件を種々設定してHHL形成に及ぼす他の因子についても検討する必要がある.
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