研究概要 |
マウス表皮に存在する樹状細胞は、ランゲルハンス細胞(LC)、Thy-1陽性表皮樹状細胞(DETC)などがある。本研究では1)LC,DETCの皮膚への遊送、活性化をトランスジェニック(tg)マウスを用いて検討し、2)表皮内に存在するDETCを発生学的に検討し、3)LCの活性化に対してMCP-1以外のサイトカインの影響を検討した。 1)すでに樹立したMCP-1tgマウスを本研究で使用した。2.1Kbのケラチン14プロモーター(K14)の下流域にMCP-1cDNAを導入したコンストラクトを用いたK14/MCP-1tgマウスを作成し、これを研究に用いた。MCP-1tgマウスは組織学的に真皮直下および毛包周囲に多数の単核球の細胞浸潤を認め、この浸潤細胞はMHCclassII陽性、CD45陽性であり、電顕的にもBirbeck顆粒を有し、真皮LC様樹状細胞と考えられた。このマウスのLC、DETCの数は正常範囲内であったが、DNFBによる接触皮膚炎の増強を認めた。またDETCに関しては、ハプテン塗布によって一次皮膚炎を誘導し表皮シートを用いて観察したところ、MCP-1tgマウスではwtマウスに比べてDETCの数が有意に増加し、また樹状突起も延長することが明らかとなった。表皮からLCを精製しcostimulatory moleculeの発現について検討した。MCP-1tgマウスとワイルドタイプ(wt)マウスでB7-1、B7-2発現に有意な相違は認められなかった。 2)wtマウスの胎仔期皮膚を用いて表皮、真皮に存在する樹状細胞(TCR+)の発生学的検討を行った。その結果、表皮内αβ,γδ陽性樹状細胞が胎生期で大きく変化することが判明した。胎仔期16日目の表内αβTCR+細胞、真皮αβTCR+細胞およびγδTCR+細胞は胎仔期にその数を減少し、新生仔期以降はほとんど認められなくなった。表皮内DETC(γδTCR+細胞)は胎仔期に次第に増数し、生後14日目以降ははぼ成獣にみられると同数となった。 3)また表皮LCに対するM-CSFの影響を検討した。LCをバニング法で採取した後、M-SCFを培養に加えLCを培養した。M-CSFは12時間培養LCのB7-1を有意に上昇させた。この結果はMCP-1の他に、M-CSFがLCの機能に関与することを示す所見と考えられる。 本研究によってMCP-1がマウスの真皮LC様樹状細胞に対して遊走能、活性化を有することが明らかになり、またハプテン塗布後においてDETCを活性化させることが明らかとなった。この結果は、皮膚においてもMCP-1が皮膚の細胞免疫に重要であることを示す所見の一つと思われる。今後はさらに胎仔期におけるMCP-1tgマウスの樹状細胞の解析が必要であると思われる。
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