研究概要 |
(1)ハンセン病の各病型のnatural killer cell活性値(NK活性)測定を行った結果,Myco bacterium lepraeに対する細胞性免疫(CMl)不全が比較的強いLLやBLではNK活性は治療経過中に変動が見られるが比較的高値を,比較的にCMlが備わるTTやBT等で正常範囲内の値を示す傾向が認められ,宿主の病原菌に対する特異的CMl不全状態に対応するNK細胞代償機転が存在する可能性が推定された。(2)多菌型化学療法期間は最低1〜2年間で,その短縮を模索中である。LL等では菌に対し細胞-マクファージ系が有効に機能せず貪食しても消化出来ないと考えられ漢方製剤(補剤)によるIL-2,IFN-μ,IL-12等を介するマクロファージ活性化やNK活性上昇による宿主殺菌能向上を期待した。補剤(補中益気湯)を化学療法剤や末梢循環改善剤と併用投与し,化学療法期間の短縮や末梢神経障害による後遺症の予防・治療の可能性を検討中である。(3)LLのNK活性の経時的測定でleprosy reaction(LR)発生とNK活性に相関が推測され,補剤投与でNK活性上昇以降は同反応は認められなかった。LLやBLのerythema nodosum leprosum(ENL)やdown grade reactionではTh2やCD8が主体の反応と考えられ,NK活性低下はTh2由来のINF-γ等を介すると推測された。なおlL-2投与4例でもLRは抑制されTh2やCD8主体のdown grade reactionに対しfeed back reguration(サイトカイン依存性抑制機構)が働いた可能性が推定され,補剤投与例でも同様の免疫学的反応が推測されると伴に主として多菌型LR予防の可能性が考えられた。以上の結果から同疾患の免疫ネットワークの一端を臨床サイドから検討し,具体的な臨床応用の可能性がある程度明らかになった。しかしENLとborderline leprosy reactionの病理組織及び免疫学的反応の異同に関する検討が不十分であり,さらに検討を行う必要がある。
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