研究概要 |
学習障害モデルの1つとされる前脳基底核(NBM)破壊モデルラットにおいて迷走神経下神経節の移植を行い,脳血流およびアセチルコリン(ACh)系に関してオートラジオグラフィによる評価を行った.脳血流,mAChR分布,m1,m2mAChR-mRNA分布,膜トランスポータ分布及びシナプス小胞トランスポータ分布を1,2,4週間にわたって経時的に比較検討し以下の知見を得た. 1.生体内脳血流分布ではNBM破壊モデル,移植モデルともに有意な変化は認められず,ACh系の画像診断に脳血流はほとんど影響しないことがわかった. 2.QNB,m1およびm2mAChR-mRNAによるAChR関連の分布は,NBM破壊群の患側皮質においてm1mAChR-mRNAの増加傾向,m2mAChR-mRNAの減少傾向を示し,それぞれ神経除去性過敏および低下を反映し,また移植により改善傾向を示したが,患側/健側比はいずれも有意差を認めなかった。 3.膜AChトランスポータ分布は,NBM破壊群で患側側の皮質において低下傾向を示したが,非特異的結合が高く良好な画像を得られないため,患側/健側比で有意差は認められなかった。 4.シナプス小胞AChトランスポータにおいてNBM破壊群で患側側の皮質において有意な低下を認め(p<0.01),起始核の障害による皮質のAChトランスポータの減少が考えられ,NBMよりの投射領域である頭頂葉において低下が著明であった.また移植群ではNBM破壊群に比して経時的に増加し,4週間後において有意な改善を認め(P<0.05),移植による効果を反映していることが示された. 以上よりシナプス小胞AChトランスポータのリガンドを^<123>Iなどの放射性薬剤で標識し,エミッションコンピュータ断層撮影法を用いることによりADにおける神経移植あるいは薬物治療の評価への応用が期待される。
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